JPF「共に生きる」ファンドによる助成事業実施団体

NPO法人いわき放射能市民測定室「たらちね」

事業の趣旨

「子どもに何を食べさせたらいいのかわからない」。東京電力福島第1原発事故の影響が今も続く福島県では、放射性物質の出荷時の検査が行われているとはいえ、いまだに「見えない・におわない・感じない」放射能汚染への恐怖に向き合い続けている方々がいらっしゃいます。自分だけでなく子ども守りたいと願うママは、とりわけそうかもしれません。

その不安を少しでも解消するために"測る"活動を始めたのが、いわき市小名浜に拠点を置くNPO法人いわき放射能市民測定室「たらちね」(以下、たらちね)。たらちねで働くスタッフはほとんどが女性でママです。彼女たちは放射能の知識が何もないところから測定技術を身につけ、ジャパン・プラットフォーム(JPF)「共に生きるファンド」の助成を受けて、さらに設備や技術の充実をさせてきました。不安を感じるものを自分たちで測り、知り、福島で生きることを決めた人たちを支えることを目指します。

  • NPO法人いわき放射能市民測定室「たらちね」
    ©JPF
  • NPO法人いわき放射能市民測定室「たらちね」
    ©JPF

事業(第27回共に生きるファンド)の概要

対応期間 2017年1月1日~2017年3月31日
助成金額 8,490,604円
支援内容 東日本大震災から6年~放射能汚染と向き合い生きるためのサポート事業。福島で生活する人々が、被ばくをできるだけ軽減しながら子育てを行うため、また心身の健康を保ち日々を過ごすことができるようにサポートするため、診療所の開設準備、ベータ線核種の放射能測定充実と情報の公開、医療・測定・子どもの自然体験事業の相談窓口開設準備に取り組む。
対象地域 福島県いわき市

事業(第28回共に生きるファンド)の概要

対応期間 2017年4月1日~2018年3月31日
助成金額 9,919,176円
支援内容 東日本大震災から7年~放射能汚染と向き合い生きるためのサポート事業。たらちねクリニックオープンと運営、ベータ線核種の放射能測定充実と情報公開、医療・測定・子どもの自然体験事業の相談窓口の運営を行う。
対象地域 福島県いわき市

活動内容

見えない不安を可視化し、公開する活動

人々の悩みに寄り添うクリニックをオープン
©JPF

たらちねには、鈴木薫事務局長のほか10人以上のスタッフが運営に携わっています。その中で男性は、クリニックの常勤医師の藤田操先生のみ。それ以外はママが多く、もともとは計測とは無関係の仕事や主婦だった方々です。東日本大震災を機に計測のための勉強をし、今では食品・水・海水・土壌・人体の中の放射能の量を測定します。勉強をしようと専門家を訪ねた際は、素人が放射能の測定を行うことに驚かれたと、今では笑いながら振り返る鈴木事務局長。

見えない不安を可視化し、公開する活動
©JPF

要望には、「子どもがよく遊ぶ場所の落ち葉を測ってほしい」「家庭で栽培した野菜を子どもに食べさせて良いか判断できない」などさまざまで、生活をする中で感じる身近な不安から起因するニーズが多いようです。たらちねが測定する際は、通常よりも安価な価格を設定し、知ることに高いハードルを設けない努力をしています。測定が難しく一般的には測定されていないですが、少しの線量でも人体に害のあると言われているベータ線の測定も実施しています。また、福島第一原発沖やいわき市沖の、海水や魚の放射能測定検査を実施し、結果を公開しています。
見えない不安を可視化することで、「避難する・避難しない」という2つだけの選択肢のほかに、「数値を測りながら、気をつけて住む」という"第3の選択肢"もあり、そうすることでも自分や家族、地域の人々の安全を守ることもできるのではないか、と鈴木事務局長は考えています。

人々の悩みに寄り添うクリニックをオープン

見えない不安を可視化し、公開する活動
©JPF

たらちねが、JPF「共に生きる」ファンドの助成を受けて開始した支援事業のもう一つの柱は、クリニックの開設です。たらちねは、甲状腺スクリーニング機器やレントゲン画像診断器などを購入し、2017年6月に診療所「たらちねクリニック」をオープンさせました。クリニックには内科と小児科を設け、通常のクリニックと同じ診察や予防接種の他、尿中セシウムの測定などができる体制を整えました。また、福島では「他人に気軽に放射能の話をしづらい」と感じるママも少なくないそうです。子どもを思いっきり遊ばせたいと、数日間、県外に「保養」に連れていく家族もいるのですが、そのことを先生や友人に素直に打ち明けることができないこともあるといいます。「たらちねクリニック」では訪れた患者の放射能に対する不安や日々の生活での悩みにじっくりと耳を傾けます。検査を求める人には可能な範囲で実施し、他の医療機関とも連携しながら必要な医療支援につなげています。

人々の悩みに寄り添うクリニックをオープン
©JPF

たらちねの助成事業を担当するJPFの斎藤真樹は「平時でも熟慮が必要な『どこでどう生きるのか?』という生活のありかたを選択し決断することは、被災者にとってはさらに大きな負担になります。家族間でも捉え方が違う『目に見えない放射能』が関わっていると、意見のぶつかり合いを避けるため話題に出せず、人生の大切な問題に正直な気持ちで取り組めず、決断の根拠があやふやなまま苦しい状況が続くことになります。専門家の丁寧な診察や、市民自らが測定した値と可視化した情報を元に、『どこでどう生きるのか?』を主体的に選択することの手助けに繋がれば」と考えています。

こうした事業は、皆様からのご寄付によって成り立っています。
引き続き、福島・宮城・岩手の被災者の方々に
温かいご支援をよろしくお願いいたします。
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